美容外科
美容外科
美容外科は、手術によって外観を改善し、患者さんの自尊心やQOL(生活の質)を向上させるための治療です。キズが治るまでの一定期間は腫れたり皮下出血斑(内出血)が認められたりという「ダウンタイム」が必要となる治療ですが、他の治療では得ることのできない大きな見た目の改善が期待できる治療法でもあります。
美容外科治療による効果は、単に見た目の改善にとどまらず、気持ちが前向きになること、周囲の人々が受ける印象が変わることなどから、以後の社会的活動がうまくいくきっかけになることが多々あります。
治療の目的を明確にして、治療によってどのような経過と結果が予想されるのかを十分に理解して治療を受けることが大切です。
当院では、形成外科の分野で基礎から手術のトレーニングを積んだ医師が治療を行っています。小児から高齢者の患者さんまで、様々な手術から学んだ知識と経験を美容外科治療に集約しています。
フェイスリフトは、頬部や頸部のたるみを改善し、凹凸のある乱れた顔面の輪郭を若々しい印象へ変化させるための美容外科手術です。
年齢に伴って顔面骨が萎縮し皮膚や筋膜が弛緩すると、頬部全体が重力にしたがって下方・内方へ移動することとなります。これによって鼻唇溝(法令線)やその下に続くマリオネットラインや脂肪のたるみ(jowl)が現れ、Baggy eyelid(眼袋)やmid-cheek groove(いわゆるゴルゴライン)が目立つようになり、顔全体の形態が逆三角形から長方形に近い輪郭へ変化するようになります。
フェイスリフトは、そのような変形に対して、皮膚および筋膜を上方・外方へ移動・固定することによって形態を改善する治療の総称です。
ひとくちにフェイスリフトと言っても数多くの術式が存在します。当院では局所麻酔下に治療が可能で、なるべく高い治療効果をあげながらダウンタイムの短い治療を行っています。
具体的には、2002年にTonnardらが「MACS lift」として報告した方法(Plast Reconstr Surg 109:2074-2086)を改変したものですが、皮膚切開は耳前部から耳垂を回って耳後部へ至る切開線とし、術直後からたるみやギャザーが生じないよう丁寧に皮膚のデザインと縫合を行います。その下層の筋膜(SMAS;superficial musculoaponeurotic system、「スマス」と呼びます)の吊り上げは、耳前部の垂直方向とその前方を斜め後方へ巾着縫合(状況により切開や切除を追加)で牽引し、側頭筋膜へしっかりと固定します。
手術時間は2時間半程度で、結果的に皮膚自体は耳垂(耳たぶ)の部分で最大約2cm挙上・短縮され、マリオネットラインより後方のフェイスライン、頸部側面のたるみが主に改善します。
術後頬骨弓の部がやや幅広くなることが多いため、もともと頬骨の張り出しが強い方や四角形に近い顔型の方にはあまり向いていない方法と考えます。また、皮下脂肪が厚い場合には、術中に脂肪吸引や脂肪を切除する操作を併用することがあります。
従来型の比較的侵襲の大きなフェイスリフト手術と、侵襲の小さいMACS liftを比較した論文(システマティックレビュー)によれば、MACS liftは低侵襲で合併症が少ないものの、長期的な治療効果としては遜色がないと報告されています(Hijkoop, et al. J Plast Reconstr Aesth Surg 75:1187-1196, 2022)。
フェイスリフト手術による治療は以下のステップで進められます。
1
診察・カウンセリング
問診と診察を行い、たるみの状態や顔面の輪郭を評価し、フェイスリフト手術が適しているかどうかの判断を行います。治療による形態変化の見込み、術後経過や起こり得る合併症について説明します。治療費用や術後の注意点等についてご理解いただいた上で、治療を行うかどうかを決定します。
2
手術当日
治療について不明な点や疑問点がないかどうか、再度確認します。
記録のための写真撮影を行います。
頭髪の処理は不要ですが、縫合部位に重なる部分はハサミで一部切らせていただくことがあります。
皮膚切開部の注射による局所麻酔後に手術を開始します。基本的に鎮静薬は使用しませんので、手術中もお話しが可能です。皮下の剥離操作、筋膜の吊り上げ、皮膚縫合の順に行います。
手術時間は2時間半程度です。
3
術後のケア
手術終了後、創部に軟膏を塗布、ガーゼを当てて、腫れを予防するためにフェイスバンドを着用し圧迫します。
術後の処置方法、注意点について説明いたします。
原則として術後1日目に経過観察のために来院していただき、創部に異常がないかどうか、血腫形成(血液の溜まり)がないかどうかを確認します。
術後3日間はなるべく常時フェイスバンドを着用するようにしてください。
術後7日目頃に抜糸を行います。以後は生活に制限はありませんが、術後2週間程度は安静を保つようにしてください。
フェイスリフトにより、以下の効果が期待できます。
頬やフェイスライン、頸部のたるみが引き締まり、顔全体がシャープな印象になります。
頸部のシワやマリオネットラインが目立ちにくくなり、若返り効果が得られます。ただし、顔面や目の周囲の小じわに対する改善には限界があります。
通常、術後1か月程度で少し後戻りがあるものの、以後は安定化し、治療効果は数年間持続します。定期的なメンテナンスや生活習慣の工夫で長期的に効果を維持することが可能です。急激な体重増加や体重減少により効果が減弱することがあります。
外鼻形成は、鼻の形状を改善するための手術治療です。外鼻は顔全体の印象に大きく影響します。個々のお悩みに応じて手術方法を選択します。
患者さんの状態や希望に応じて最適な手術法を選択します。3次元カメラを用いたシミュレーションを行い、ご本人の個性や全体のバランスをみながら治療方法をご提案します。
以下の手術方法の多くは、軟骨下切開と鼻柱切開を組み合わせたアプローチ(open rhinoplastyと呼びます)で行います。
鼻先を少し尖った形態にしたい場合や、鼻先が下に向いた状態を改善したい場合、団子鼻変形を改善したい場合などに鼻尖形成術を行います。
左右の大鼻翼軟骨同士を縫合すると同時に、鼻尖・鼻翼部の余分な皮下組織を切除します。状態により、軟骨移植を併用することがあります。
鼻尖部~鼻背部を高くして「鼻すじ」を明瞭にする手術です。鼻根部の骨膜下までプロテーゼを挿入します。鼻背部の形状に合わせてプロテーゼを加工して挿入します。
特に鼻背部から鼻根部が平坦な方に有効な手術です。
耳介軟骨移植を併用することがあります。
鼻先が上を向いた状態や、正面から鼻孔が見える状態、短鼻(鼻が短い)を改善するために鼻中隔延長術を行います。
鼻翼(小鼻)と鼻柱基部の位置の関係性をACR(ala-columella relationships)と呼びます。
鼻柱基部が鼻翼基部よりも少し下(前)にある状態が良好なACRとされますが、本手術によりACRの改善が可能です。
本手術を行う場合には軟骨移植を行う必要があります。手術では、外鼻の支柱となっている大鼻翼軟骨と外側鼻軟骨の間の靱帯を剥離して、大鼻翼軟骨を尾側(下)へ移動させ耳介軟骨を用いて鼻中隔に固定します。
また、鼻背の高さが足りない場合には、同時に鼻背部へのプロテーゼや自家組織の挿入を組み合わせて行うことがあります。
鼻翼(小鼻)の幅が広い場合や、鼻翼自体が大きい場合に鼻翼縮小術を行います。患者さんごとに合ったデザインで手術を行いますが、基本的には鼻翼の内側(場合により外側)の皮膚を一部切除し、鼻翼同士を引き締める縫合糸をかけて閉鎖します。
傷あとが腫れやすい「ケロイド体質」がある場合には傷あとが目立つ可能性があり注意が必要ですので、予め申告してください。
外鼻形成の手術治療は以下の手順で進められます。
1
診察・カウンセリング
現在の外鼻形態、顔全体の状態を評価します。希望する外鼻形態へ変化させることが可能かどうか、どのような方法で治療するのが適切かについて説明を行います。
治療費用や治療前後の注意点、起こり得る合併症などについて説明します。ご不明な点があれば何でもご相談ください。
2
治療当日
手術は基本的に局所麻酔で行っていますが、麻酔の注射の際には鎮静薬の投与を併用することがあります。
手術時間は1~2時間程度です。
手術後はテーピングと圧迫のためのギプスを装着します。
3
術後のケア
手術当日は入浴や飲酒、運動などは控えてください。
手術翌日に状態確認のためにご来院いただき創部の診察を行います。以後はシャワーは可能ですが、術後1週間程度は汗をかく運動やサウナなどは控えるようにしてください。
術後1週間は圧迫のためのギプスの装着を継続し、術後1週間で抜糸を行います。
鼻尖部のみの処置ではほとんど腫れは出ませんが、鼻根部への処置を行った場合(隆鼻術、鼻中隔延長など)には1週間~10日程度腫れが出る時期があります。
瘢痕(きずあと)修正は、外傷や手術などによって残ったきずあとを目立ちにくくするための外科治療です。瘢痕を手術によって完全に消すことはできませんが、幅の広いきず、陥凹した(窪んた)きずあとを目立たなくさせることが可能な場合があります。
ケロイドや肥厚性瘢痕など盛り上がって赤みを伴うきずあとについては、手術治療のみでは再発することが多く、放射線治療と組み合わせて治療する必要がありますので、放射線治療が可能な大学病院等をご紹介することがあります。
瘢痕を修正するためには、以下のような治療が行われます。きずの状態や部位によって最適な治療法を選択します。
浅く細かい瘢痕に対しては、フラクショナルレーザーを用いて凹凸を滑らかにすることで瘢痕を「ぼかす」治療を行います。回数を重ねることで徐々に目立たなくさせることができます。ただし、一定以上の深さを持つ瘢痕、盛り上がった瘢痕に対しては効果が限定的であり、他の治療法を選択する必要があります。
幅の広い瘢痕や凹凸のある瘢痕に対しては、外科的に組織を切除し、きれいに縫合することできずあとを目立たなくさせることが可能です。ただし、全く跡形なく治すことは現代の医療技術では不可能ですので、線状の瘢痕は必ず残ることとなります。
多数の線状瘢痕がある場合や広範囲にわたる瘢痕には、他の部位(下腹部など)から皮膚を移植する手術治療を選択する場合があります。
瘢痕(きずあと)修正の手術は、次のステップで進行します。
1
診察・カウンセリング
瘢痕の状態や大きさ・位置を評価します。ケロイド体質の有無などについて確認し、適した治療法をご提案します。治療に伴う合併症、治療費用や経過の見込みなどについて説明します。ご不明な点があれば何でもご相談ください。
2
治療当日
局所麻酔下に手術治療を行います。治療時間は1~2時間程度です。
手術後は軟膏とガーゼや包帯を装着します。
3
術後のケア
術後は、患部を保護するために適切なドレッシングを行います。
大きな手術を行った場合には手術翌日に創部の確認のためにご来院いただく場合があります。
以後はシャワー洗浄を行い、軟膏の外用を継続してください。術後約1週間で抜糸を行います。手術後の創部は、1~2か月程度で赤みと硬さが増加する時期を経て、3~4か月で徐々に成熟化し周囲と同等な色調に戻っていきます。
術後3か月程度テーピングを行っていただく場合があります。
女性の身体に関する悩みは、妊娠・出産や加齢、体重の増減など様々な要因で生じることがあります。当院では、乳房形態(過大や下垂など)、乳輪・乳頭形態(過大や陥没乳頭など)、会陰部の形態改善のための手術治療を行っています。